●最近、新しい紙の材料として「ケナフ」がありますが、本当に森を救ったり、地球温暖化の防止に役立ったり、
木材紙に大きくとって代わる力量を持っているのでしょうか??
はじめに紙問題の本質を調べると意外な事実が見えてきます。
最近の新聞やテレビなどの報道の中には、誤解や一方的な思い込みに基づいているために誤道しかねませんが、紙の消費の増大は世界の森林を減少させているのは全くの誤解なのです。
確かに世界の森林の面積は年々減少してますが、その内訳をみると、先進国ではむしろ増加しており、減少しているのは開発途上国です。
減少の主な原因は、薪炭材の利用・焼畑農業・牧草地への転用なので、紙の消費の為に熱帯雨林が伐採されていると言われますが、これも事実誤認です。
実は、海外から多く輸入される紙や木材は、持続的な森林経営(生態系の健全性を保ちつつ、植林や再植林を計画的に行ったり、充分な手入れをする事によって森林を適切に管理する事)の下で収穫されております。
更に製紙会社は将来起るかも知れない木材の需要変動に備え、海外を中心に積極的に植林を行っております。
では、地球温暖化防止に役立つのか?
全ての植物は、二酸化炭素を吸収して酸素を放出します。ケナフ樹林も同じですが、植物の品種・土壌・気象条件によって二酸化炭素の吸収量が異なります。
基本的には植物の成長量に比例するのですが、ケナフの成長量は国内樹木の4〜5倍とのデータが発表されております。よって二酸化炭素の吸収効率が非常に良い為、地球の温暖化防止に役立つということです。
では、本当に森が救えるのでしょうか?
事実、本当とは言えません。森林問題を考えるにあたり、「森林全てを手づかずのままの方が、環境保護にとって最も良い」とか「木材紙の代わりにケナフのような非木材紙を使えば森林が救われる」というのは、一種の錯覚なのです。
真の意味で森林保全するのは、むしろ積極的に森林の育成に参加することなのであり、何よりもまず「森林は再生可能な資源である」ということを認識するということなのです。
そこでケナフは、最適なサイクルで更新(植林と収穫)を繰り返す事の出来る植物として好ましいのです。
まだまだ難しいと言うのが現状です。実力はあるのですが、生産コストが高く、安定かつ大量の供給が難しく残念ながら現実的ではありません。
なぜ難しいのかというと、5つの点が挙げられます。
- ケナフは草本植物であるために毎年、耕作・収穫等の栽培経費がかかる
- 収穫が通常、年一回に限られ、原料として使用するまでの保管場所が必要
- 木材チップに比べ、重量当りの容積が約3倍であり、輸送・保管の効率が悪い
- 連作により土地が痩せることを考慮し、一定のケナフの収穫量を保つには、広大な土地が必要である
- 日本でのケナフパルプの製造が、現状で木材の約5〜6倍のコストがかかる
以上の5点が今後の課題となり、この問題がクリアできてこそ森林問題や紙問題に解決の兆しが見えます。まず、出来る範囲内から環境保全の為の行動を取る事が重要なのです。
●非木材原料・木材パルプ「バガス」って何?
バガスとはサトウキビの擦りカスのことで、非木材原料のとして用いられることが増えました。 バガスなど農産廃棄物の活用の観点からも非木材パルプで木材パルプを補完していくことが課題です。
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